チベット旅行記 1 (1) (講談社学術文庫 263)



チベット旅行記 1 (1) (講談社学術文庫 263)
チベット旅行記 1 (1) (講談社学術文庫 263)

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出だしは ややかったるいと お思いになるかもしれませんが、、

 河口慧海の傑出した高い志にまずは感服。このシリーズの出だしは、旅の準備やらなんやらで、なかなか話が進まないし、河口慧海の几帳面というか堅い性格がかったるく思えて、「冒険無いの?」って読んでました。
 しかし、2巻以降を読破して後もう一度この第1巻から読み返すと慧海の性格のバックグラウンドや彼の日本での生活がどのようだったのかがよく現れており、大変面白く読むことができました。
 この本に興味をもたれるのは、チベットに関心のある人、ヘディンの失われた湖などに関心のある人などが多いかと思いますが、1だけ読んで判断しちゃー大損ですよ。この本は。全巻読破あるのみ。
知力を伴った行動力って凄いですね

何が凄いって、ろくな装備も持たずに山越えをバンバンやっているところが凄いですね。安全が最優先される今日の登山に身を浸している自分には、怖くて手が出せない次元の話です。

それも鎖国されている国に密入国していくのだから、その肝っ玉といったらこれまた凄い。密入国だから、色々と困難が待ち受けているのだけれども、それも何とか切り抜けていくところが、一つの見所にもなっていますね。

この人の凄いところは、単に行動力があるわけではなく、真の仏道を追い求める気力と、その気力に裏打ちされた知力が兼ね備わっている点だと思います。それ故、困難に直面しても切り抜けられたのだと思います。

今の時代には、なかなか登場し得ない人物の、興味深い紀行文です。
仕合わせな河口慧海、可哀想な猿岩石

 たぶんみんなも忘れちゃったんじゃないかな。あの猿岩石が世界中を苦労して旅して回ったのを、日本中の視聴者が嘲(あざ)笑いながら+同情しながら、毎週のように手に汗握り見守っていたのを。あのときテレビの画面を見つめていた熱狂とは何だったのか。さらには猿岩石のもたらしてくれた「感動」の賞味期限はどれくらいだったのか(おそらく1年もなかったでしょう:涙)。

 きょう紹介する河口慧海さんも猿岩石みたいに、なんの頼る術(すべ)もないのに旅した人である。かれが目指した先は鎖国状態にあったチベットで、なんとこの国に潜入するためにインドで、チベット語をマスターし(外国語の教員として興味津々)、あげくのはてにチベット人になりすまし!、当地の王宮に入るのにまんまと成功し、国王の主治医として何年も平気な顔で仕えていた。おもしろいのは河口慧海さん、なにか困ったことがあると、かならず念仏を唱えるということ。たとえば目の前にどうしても渡れそうにない急流があると、座禅を組むこと数時間して「えいやっ」てな感じで飛び込むと、これが不思議だけれど渡れちゃうんですよねー。なぜ河口慧海さんはこれほどチベットに行きたかったかというと、かれが求めていた仏典がそこにあったからだ。かれは一面で神国日本を背負っていたと言えよう。

 かくも大きな目的があると人はたぶん何でも出来てしまう。だから若い人には大きな目的を持ちなさいよ、なんて口が裂けても絶対に言えないけど、そういう目的を持つことが可能な、仕合わせな時代がかつてあった、ということを知るだけでも貴重な本かもしれない。ぎゃくに言えば現代とは可哀想な猿岩石がすぐに忘れられちゃうような可哀想な時代なのかも。きっとテレビで視聴者が猿岩石を見て笑ったり泣いたりしたのは、そこに等身大の自分の姿を見ていたからではないだろうか。



講談社
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